
マレーシア不動産のSPAは、Sale and Purchase Agreement(売買契約書)を指し、予約金の支払い、契約締結、州政府同意、残代金決済、鍵の引渡し、登記までの基準となる書類です。日本在住の購入者は、現地に常駐しなくても購入できますが、外国人購入規制、融資条件、州政府承認の有無によって、資金準備額と完了時期が変わります。
特に中古物件では、予約金を払った後に融資不承認、外国人購入不承認、売主の既存ローン清算の遅延が起きると、契約解除や延滞利息の問題につながります。SPAへ署名する前に、購入資格、資金調達、物件の権利関係、解約条件を文書で確認することが、損失を限定する実務上のポイントです。
新築と中古では支払方法が異なります。新築は建築進捗に応じた分割払いが中心であるのに対し、中古は通常、契約時の頭金と90日程度以内の残代金決済が中心となります。
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外国人が購入できる最低価格は連邦で一律ではなく、州政府が定めます。クアラルンプール、セランゴール、ジョホール、ペナンなど主要州でも、物件用途、区域、完成済みか新築か、価格帯によって条件が異なるため、広告価格だけで購入可能と判断してはいけません。
2026年時点の目安として、外国人の最低購入価格はRM100万以上とされる州・地域が多い一方、RM200万以上を求める区域や、ペナン州本土の区分所有住宅のように、より低い基準を設ける区域もあります。ただし、これは恒久的な全国基準ではなく、州政府の通達や経済政策で変更されるため、署名前に州土地局、デベロッパー、購入者側弁護士へ対象物件の適格性を確認してください。
外国人が原則として取得しにくい、または取得対象外となり得る物件には、ブミプトラ割当住戸、低価格住宅、廉価住宅、マレー人保留地、州政府が外国人譲渡を制限する土地などがあります。物件が外国人向け価格を満たしていても、タイトルに制限条項があれば承認されない可能性があります。
投資目的では、購入資格とは別に賃貸需要も確認します。完成済みコンドミニアムが多い地域では、同一エリアの新規供給、管理費、空室期間、家具費用を含めて収支を見なければ、想定賃料だけでは判断できません。日本円で資金を準備する場合は、リンギット相場の変動により頭金・税金・維持費の円換算額も変わります。
フリーホールドは原則として期限のない所有権、リースホールドは州から一定期間借り受ける権利です。リースホールドは残存年数だけでなく、譲渡時に州政府同意を必要とすることが多く、通常の売買決済期間に追加期間が生じる要因になります。
タイトルに「Restriction in Interest」などの譲渡制限がある場合、フリーホールドでも州政府同意が必要になることがあります。中古物件のSPAでは、誰が承認申請を行うか、承認が遅れた場合の完了期限をどう延長するか、承認が拒否された場合に予約金・頭金をどう返還するかを明記します。
リースホールド物件は、州政府同意により3〜6か月程度の追加時間を見込む説明もありますが、案件や州の処理状況で大きく変動します。移住時期が決まっている場合は、鍵の受領予定を「契約から何か月後」と固定せず、承認取得後の決済条件を弁護士と確認する方法が実務的です。

中古物件では、価格、家具・家電の引継ぎ、鍵の引渡し日、融資条件をオファーレターまたは購入申込書にまとめ、予約金を支払う流れが一般的です。アーネストデポジットは売買代金の2〜3%程度とされ、SPA締結時に支払う通常10%の頭金の一部として扱われます。
例えばRM100万の中古物件なら、予約金2%はRM2万、SPA時に10%まで支払う契約なら追加頭金はRM8万が目安です。ただし、外国人は融資比率がマレーシア人と同一とは限らず、銀行評価額が売買価格を下回れば、頭金とは別に差額資金が必要になります。
予約金は売主個人の口座へ送金せず、原則として登録不動産会社のクライアント口座または弁護士のステークホルダー口座で保管される条件を確認します。振込先名義、領収書、オファーレター記載の物件番号、返金条件が一致しない場合は支払いを見送るべきです。
一方、住宅デベロッパーが販売するHDA対象の新築住宅では、SPA締結前に予約金を集める行為は規制上問題となり得ます。予約料、EOI、処理費用など名称を問わず、先行支払いを求められた場合は、APDLの有効性、SPA案、返金根拠、受領口座を現地弁護士に確認してください。
中古物件では、融資不承認だからといって自動的に予約金が返金されるわけではありません。融資を使う場合は、オファーレターとSPAの双方に、指定期間内に融資承認を得られなかった場合の解除権、提出すべき不承認証明、返金額、控除できる費用を記載します。
融資特約では、単に「ローンが通らなければ解除可能」とするだけでは不十分です。何行の銀行へ申請するか、承認期限を何日とするか、希望融資額または最低融資比率、銀行評価額が低い場合の扱いまで条件化すると、資金不足のリスクを判断しやすくなります。
マレーシアの銀行融資を利用する場合、パスポート、所得証明、納税資料、銀行残高証明、雇用証明などを求められることがあります。日本居住者は書類の英訳、公証、送金記録の提出を求められる場合もあるため、予約金支払い前に複数金融機関または融資担当者へ事前審査の可否を確認します。
融資を使わない現金購入でも、送金遅延やマネーロンダリング対策審査を考慮し、送金可能額と送金元証明を確認します。RM建ての決済日が近づいてから円を調達すると為替変動の影響を受けるため、海外送金サービス、銀行送金、資金源資料の準備を早めに進めます。

中古SPAは法律で定型化されておらず、売主側または買主側弁護士が作成します。売主側弁護士が起案した契約書をそのまま受け入れるのではなく、買主側のコンベヤンシング弁護士を選任し、タイトル検索、売主の破産検索、SPAレビュー、同意申請、登記、決済管理を依頼します。
弁護士へ依頼する際は、見積書にSPA作成・確認費用だけでなく、土地検索、会社検索、翻訳、州政府同意、登記、銀行ローン契約、郵送、SST、実費が含まれるかを確認します。中古物件の売買契約の弁護士報酬は、Solicitors’ Remuneration Order 2023の基準で最初のRM50万までが1.25%(RM50万の物件ならRM6,250)とされ、これにSSTと実費が加わります。外国人購入、リースホールド、タイトル未発行、融資利用では費用が増えることがあります。
新築のHDA対象住宅はSchedule GまたはSchedule Hの法定様式が基本となり、デベロッパーが買主に不利な形へ自由に変更できるものではありません。ただし、サービスアパートメント、SOHO、SOFO、商業タイトルの居住用物件はHDA保護の対象外となる場合があるため、SPAの遅延補償、欠陥責任、支払スケジュールを個別に確認します。
中古物件では、管理費、修繕積立金、固定資産関連の賦課金、水道・電気料金などの未払いを、鍵引渡し日までに誰が負担するかもSPAに記載します。賃貸中物件を引き継ぐ場合は、賃借人、月額賃料、敷金、契約期間、解約条項を確認し、賃貸借契約書の写しを受け取ります。
中古物件のSPAでは、契約時に売買価格の10%を頭金として支払い、残代金90%を通常90日以内に決済する構成がよく使われます。30日の延長を認める契約もありますが、延長期間には利息が発生することがあるため、銀行の融資実行日と州政府同意の予定を踏まえて期限を設定します。
残代金が期限までに支払えない場合、SPA解除と頭金没収につながる可能性があります。RM100万の物件で頭金10%ならRM10万となるため、融資承認だけでなく、ローン契約署名、担保設定、銀行から売主側への資金実行までの工程を確認しておく必要があります。
SPAには、売主が既存ローンを完済して担保を外す義務、売主が空室状態で鍵を渡す日、遅延した場合の日割り補償、備品リストも入れます。中古物件は原則として現状有姿での取得となり、新築のような法定の24か月欠陥責任期間がないため、署名前の室内・設備検査を完了させます。

HDA対象の新築住宅では、SPA署名時の10%に続き、基礎工事、躯体、壁、屋根・配線・配管、道路・排水などの進捗に合わせて支払います。ストラタ住宅の一般的なSchedule Hの例では、基礎10%、躯体15%、壁10%、屋根・配線・配管10%、内外装10%、下水5%、排水2.5%、道路2.5%などが請求対象となります。
完成・CCC発行、電気・水道接続可能な状態でのVacant Possession(VP)時には、累計95%程度まで支払いが進み、残る5%は欠陥責任に対応する留保金として扱われます。融資を使う場合、銀行がデベロッパーへの進捗払いを実行し、買主は実行済み融資額に対応するプログレッシブ利息を負担するため、完成前でも毎月の資金流出を見込みます。
HDAの標準SPAでは、戸建てはSPAから24か月、ストラタ物件は36か月以内のVPが基本です。遅延時のLADは、売買価格に年10%を乗じて日割計算する仕組みが一般的で、連邦裁判所判断では予約金支払日を起算点とする考え方が示されていますが、実際の請求可否は物件のHDA適用、契約内容、事実関係を弁護士へ確認してください。
新築は完成まで賃貸収入を得られず、完成後に同時期の引渡し住戸が市場へ出ると空室や賃料下落が起こる可能性があります。販売資料の想定賃料ではなく、近隣の成約賃料、管理費、家具費、短期賃貸規約、完成後の供給戸数を確認して判断します。
中古物件で売主に既存ローンが残っている場合、買主の資金または買主融資の一部から、まず売主銀行への返済額であるRedemption Sumを支払います。売主銀行が担保解除書類、原本タイトル、必要書類を売主側弁護士または買主側銀行弁護士へ渡し、その後に残代金が売主へ支払われる流れです。
売主銀行の書類返却が遅れると、買主が残代金を払うための手続きが進みません。このためSPAでは、Redemption Sum支払い後の書類返却期限、売主銀行の遅延時に買主へ無利息の期限延長を認めるかを定めます。
個別またはストラタタイトルが発行済みなら、譲渡証書であるMemorandum of Transfer(MOT)を登記し、買主が融資を使う場合は銀行担保も登記します。タイトル未発行の物件では、MOTではなくDeed of Assignmentなどの譲渡書類を使うことがあり、後日にタイトルが発行されてから正式移転手続きが行われます。

外国人による取得では、国家土地法(National Land Code)第433B条により州政府の承認が必要で、リースホールド、タイトル制限付き物件、一定用途の物件では追加同意が必要です。承認申請は通常SPA締結後に行われ、SPAでは承認取得を前提条件とし、承認取得後から残代金の決済期間が始まる形が一般的です。
承認申請では一般に、パスポート写し、SPAまたはオファーレター、タイトル資料、支払能力資料、申請書、会社購入なら会社登記書類などが求められます。日本から手続きする場合は、署名書類の原本送付、委任状、英訳・認証の要否も確認し、承認取得前に決済期限が到来しないようSPAの条件を調整します。
州政府同意が必要な案件は、通常の中古決済より長期化します。融資がある場合には、州政府同意、銀行承認、売主の担保抹消、登記を並行して進める必要があり、どれか一つが遅れても延滞利息が生じない契約設計が必要です。
不動産購入はMM2Hなどのビザ取得を自動的に保証するものではありません。移住を前提に購入する場合は、不動産契約とは別に、最新のビザ条件を公式情報と有資格の移民専門家へ確認してください。
SPAそのものの印紙税は、2026年時点の目安ではRM10の定額とされます。一方で、金額負担が大きいのは所有権を移すMOTまたは譲渡書類の従価印紙税であり、原則として売買価格と税務当局評価額の高い方を基礎に算定されます。
マレーシア国民の場合、MOT印紙税の目安は、最初のRM10万が1%、次のRM40万が2%、RM50万超からRM100万までが3%、RM100万超が4%です。例えばRM100万の評価額なら、RM10万までRM1,000、次のRM40万でRM8,000、残るRM50万でRM15,000となり、合計RM24,000が目安です。一方、外国籍の個人(マレーシア永住者を除く)や外国企業が住宅を取得する場合、2026年1月1日からは譲渡証書の印紙税が一律8%に引き上げられており、RM100万の物件ならRM80,000となります。
ローン契約には、融資額の0.5%程度の印紙税が別途かかります。RM70万の融資ならRM3,500程度が目安となり、これにローン契約の法務費用、評価費用、登記費用、実費が加わります。初回購入者向けの印紙税免除はマレーシア国民が対象で外国人には適用されないため、広告上の「無料MOT」「法務費用負担」が何を含むかを必ず書面で確認してください。
印紙税率、SST、免税制度、州の申請費用は制度改正で変わるため、2026年時点の目安として扱い、LHDN、土地局、弁護士の最新見積書で確認してください。新築で個別タイトルが未発行の場合は、SPA締結から数年後にMOT費用が発生することもあり、購入時の諸費用だけでなく将来の資金確保も必要です。
マレーシア不動産のSPA契約では、物件選定の後に予約金を払うのではなく、外国人購入資格、州政府同意、融資特約、タイトル、決済期限を確認してから申込みを行います。中古では予約金2〜3%、SPA時の頭金合計10%、残代金90%を90日程度で決済する形が多く、州政府同意や売主ローンがある場合は延長条項を設けます。
新築はHDA対象かを確認し、建築進捗に連動する支払い、VP期限、LAD、24か月の欠陥責任期間を確認します。中古は現状有姿が基本であるため、室内検査、管理費滞納、賃貸借契約、売主の担保を署名前に調査します。
購入価格とは別に、MOT印紙税、ローン印紙税、法務費用、州政府同意費用、送金費用、管理費、家具費、為替変動への余裕資金を見込みます。SPAに署名する前に、外国人購入を扱うマレーシアの弁護士、税務専門家、融資機関へ個別の条件を確認し、英語契約書の期限と解除条項を理解したうえで手続きを進めてください。
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