
マレーシアの不動産を売却する日本人は、売却価格ではなく、取得費や売却費用を差し引いた譲渡益に対してRPGTを負担します。RPGTを試算する際は、税率だけでなく、売買契約日を基準とする保有期間、買主による7%の留保、60日以内の申告を一体で確認することが必要です。
本記事の税率・期限・控除額は2026年時点の目安です。外国人向けの税率は2019年以降同じ水準ですが、申告・納付の仕組みは2025年1月の自己申告制度の導入で変わっています。ただし、RPGTの制度、電子申告画面、必要書類、外国送金時の金融機関確認は改正され得るため、売買契約に署名する前にマレーシアの弁護士、ライセンスを持つ税務専門家、LHDNの公式情報で確認してください。
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RPGTは、マレーシア国内にある土地、戸建住宅、コンドミニアム、商業物件、工業用物件、農地などを譲渡して利益が生じた場合に課される税金です。根拠法はReal Property Gains Tax Act 1976で、マレーシア内国歳入庁であるLHDNが所管します。
対象は通常の売買だけではなく、権利移転、譲渡、一定の贈与などにも及びます。さらに、保有資産の大部分がマレーシア不動産で構成される不動産会社の株式を処分する場合は、取引形態や売主の属性によりRPGTまたは別のキャピタルゲイン課税との関係を個別に確認しなければなりません。
日本国籍でマレーシアの永住権を持たない個人は、原則として非市民・非永住者である外国人の区分に入ります。マレーシア居住の有無やMM2Hなどの滞在資格があっても、RPGTの税率区分は国籍・永住権等を基準に判定されるため、ビザ保有だけで市民・永住者と同じ税率になるわけではありません。
売主は譲渡益を計算して申告・納税する義務を負い、買主は売買代金の一部を留保してLHDNへ送金する役割を負います。外国人売主では、買主または買主側の弁護士が原則として売買代金総額の7%を留保するため、決済日に受け取れる資金は売値の全額ではありません。

外国人のRPGTは、物件を何年間保有したかではなく、法令上の取得日から譲渡日までの期間で判定します。書面による売買契約がある一般的な取引では、購入時と売却時のSPA署名日が基準となるため、引渡日、残代金決済日、登記完了日だけを見て売却時期を決めると税率区分を誤るおそれがあります。
例えば、購入SPAから5年が経過する直前に売却SPAへ署名すると、外国人には30%の区分が適用される可能性があります。一方で、5年経過後の6年目に入ってから署名できれば10%区分となるため、売却価格の変動、空室期間、管理費、ローン返済、為替変動と比較して判断します。
2026年時点の目安では、日本人を含む非市民・非永住者の個人は、取得から5年以内の譲渡で30%、6年目以降の譲渡で10%のRPGT税率が適用されます。マレーシア市民・永住者が6年目以降に0%となるのに対し、外国人には10%の下限が残る点が、出口収支の大きな差です。
したがって、外国人にとっては5年目から6年目へ移る時点が最も大きな税率差となります。6年目以降にさらに長く保有してもRPGTが0%になる制度ではないため、売却延期の判断は税率だけでなく、物件の競合供給、賃料下落、空室、修繕、リンギットと円の為替変動を含めて行います。
2024年以前の旧情報には、2025年1月の自己申告制度の導入とe-CKHTでの電子申告義務化より前の説明が残っているものがあります。税率表だけを見て判断せず、売却予定年に適用される申告・納付期限まで確認してください。

RPGTは、売却価格にそのまま税率を掛ける税金ではありません。概算では、売却価格から売却に直接要した費用を引き、そこから購入価格、取得関連費用、要件を満たす改修費を引き、個人向け控除を反映して税率を掛けます。
外国人個人でも、原則として譲渡益の10%またはRM10,000のいずれか大きい額の控除を利用できる可能性があります。例えば、費用控除後の譲渡益がRM200,000なら、10%に当たるRM20,000がRM10,000を上回るため、課税対象はRM180,000となり、6年目以降の10%税率ならRPGTはRM18,000が目安です。
取得価額に含め得る費用には、購入SPAの弁護士費用、印紙税、評価費用、恒久的な価値向上につながる改修費用などがあります。売却価額から差し引き得る費用には、売却時の仲介手数料、弁護士費用、評価費用、販売のための一定の支出が含まれ得ます。
一方、家具・家電など動産の購入費、通常の清掃、軽微な修理、管理費、保険料、ローン利息は、RPGTで当然に控除できる費用ではありません。同じ費用を賃貸所得など他の税目で控除している場合、RPGTで重複控除できない可能性もあるため、支出内容と申告履歴を税理士へ示します。
改修費は領収書があるだけでは足りず、売却時点で物件価値の向上・維持に反映されている支出かが問われます。キッチンの造作、床材、ビルトイン収納、浴室改修などは検討対象になり得ますが、個別の工事が認められるかは専門家の確認が必要です。

2025年1月1日以降の譲渡では、RPGTは自己申告制度へ移行しており、売主は原則として譲渡日から60日以内に申告し、計算した税額の不足分を90日以内に納付します。買主も原則60日以内に取得申告と留保金の送金を行うため、売却SPAを締結してから資料を集め始めるのでは間に合わないことがあります。
外国人売主では、売買代金の7%が留保される点を資金計画に織り込む必要があります。売値RM1,000,000なら、通常の留保額の目安はRM70,000であり、実際のRPGTがRM20,000なら差額RM50,000は精算・還付の対象となりますが、受領時期は手続き状況に左右されます。
LHDNの審査や還付にかかる時間を前提に、売却代金で日本の住宅購入、ローン返済、別物件の取得を直ちに行う計画は余裕を持たせます。2026年1月1日以降は、売主がe-CKHTで申告した税額を買主へ通知すれば、買主は7%と自己申告税額のうち低い額を留保すればよい仕組みも加わったため、売主側・買主側の弁護士間で早期に確認します。
2025年1月1日以降、申告書はMyTax上のe-CKHTでの電子提出が義務となっており(紙の申告書は受理されません)、不動産を売却した売主はCKHT 1A、買主はCKHT 2Aを提出します。不動産会社株式の処分ではCKHT 1B、免除の選択や譲渡損失となる処分ではCKHT 3を用いるなど書式が異なるため、取引内容に対応した書類を弁護士へ確認します。
私的居住用住宅に関する一生一度の免除は、外国人は利用できないため、日本人売主はRM10,000または譲渡益の10%控除と、費用控除の証憑を中心に計算します。なお、マレーシア市民・永住者向けの私的住宅免除と、全個人に適用され得る一般控除は別制度です。
申告を弁護士へ依頼する場合でも、費用証憑をすべて提出しなければ適切な課税譲渡益は算定できません。委任範囲にe-CKHT入力、計算書作成、LHDNからの照会対応、還付手続きまで含まれるかを、見積書や委任契約で確認します。

日本の居住者は、マレーシア不動産の売却益についても日本で譲渡所得として申告が必要になる可能性があります。マレーシアでRPGTを納めたからといって、日本での申告が自動的に不要になるわけではなく、日本側では円換算した取得費、譲渡費用、売却価額、所有期間などを用いて計算します。
日本の不動産譲渡所得では、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかにより、長期・短期の区分が変わります。マレーシアのSPA基準による6年目判定と、日本の1月1日基準は一致しないため、同じ売却でも両国で保有期間の見え方が異なります。
日本の税務では、海外中古不動産の減価償却や取得費の扱いが譲渡所得に影響します。マレーシアで認められた費用が日本で同額控除できるとは限らないため、国際税務に対応できる日本の税理士へ売却前に試算を依頼する方法が実務的です。
マレーシアで納付したRPGTは、日本の確定申告で外国税額控除を検討する資料となり得ます。ただし、控除できる額は日本の所得区分、課税所得、控除限度額などで決まり、マレーシアでの納付額がそのまま全額控除されるとは限りません。
送金自体は所得ではないため、日本への送金だけに課税される仕組みではありません。しかし、金融機関から資金原資、売買契約、納税状況の確認を求められる可能性があるため、売却代金の受領から円転・送金までの証憑を一連で残します。
マレーシア不動産の売却では、RPGTのほか、空室による賃料減少、周辺の新築供給による売却競争、リンギット安による円換算後の受取額低下、州ごとの外国人取得・譲渡規制も収支に影響します。税引後の利益は、売却価格から残債、仲介料、法務費用、RPGT、留保金による資金拘束を引いた金額で確認します。
外国人としてマレーシア不動産を売却する場合、RPGTは5年以内なら原則30%、6年目以降でも原則10%が課されるため、長期保有しても0%にはなりません。売却判断では、SPA基準の保有期間、証憑で裏付けられる取得費・改修費・売却費、7%留保による資金拘束を売却前に試算します。
実行順序は、取得・売却SPAと費用証憑を整理し、売却SPAの予定日で税率区分を確認し、マレーシアの弁護士・税務専門家にRPGT計算を依頼し、e-CKHTの60日申告と90日納付に備える流れです。日本居住者は、マレーシアでの納税証明と計算資料を保管し、日本の譲渡所得申告および外国税額控除について日本の税理士へ確認してください。
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