
マレーシアで住宅を購入する際は、物件価格や頭金とは別に、所有権移転のMOT印紙税、ローン契約印紙税、弁護士費用、州政府の同意取得費用などが発生します。特に日本人を含む外国人が住宅を取得する場合、2026年1月1日以降は住宅用不動産の移転に一律8%の印紙税が課されるため、購入予算では物件価格のほかに取得諸費用を分けて確保する必要があります。
以下は2026年時点の目安です。印紙税率、免除制度、外国人の購入最低価格、州政府同意の要件、融資条件は改正や州ごとの運用で変わるため、SPA署名前にマレーシアの不動産弁護士、LHDN、購入予定州の土地当局へ確認してください。
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MOT印紙税とは|課税対象・納付者・評価額の基本

Memorandum of Transfer(MOT)とSale and Purchase Agreement(SPA)の違い
MOTはMemorandum of Transferの略で、登記済みの土地・区分所有権を買主へ移転するための証書です。住宅の個別タイトルまたはストラタタイトルが発行されている物件では、通常、MOTに対して価額連動の印紙税がかかります。
SPAはSale and Purchase Agreementの略で、売主と買主の売買条件、価格、引渡し時期、違約時の扱いなどを定める売買契約です。SPA自体の印紙税は通常RM10の定額ですが、SPAのRM10とMOTの移転印紙税は別の費用であり、混同すると資金計画が不足します。
- SPAは売買条件を定める契約書、MOTは登記上の所有権を移す書類です
- 個別タイトル未発行の物件では、MOTではなくDeed of Assignmentを使う場合があります
- 通常は買主がMOT印紙税、SPA関連費用、買主側の弁護士費用を負担します
新築の未完成物件では、購入時点で個別タイトルがないこともあります。この場合も、将来の権利移転に関する書類と印紙税が必要になり得るため、「MOT無料」という販売表示が税の免除なのか、デベロッパーが費用を負担する販売条件なのかをSPAで確認してください。
印紙税の課税標準は売買価格と市場価値の高い方
MOT印紙税は、SPAに記載された売買価格だけで自動的に決まるわけではありません。LHDNの印紙税ガイドラインにより、売買対価または市場価値のいずれか高い方を基準に計算され、評価の結果、市場価値が売買価格を上回れば、その高い評価額に税率が適用されます。
例えば、RM100万で契約した住宅の市場価値がRM110万と評価された場合、国民・永住者の累進税率でもRM110万を基礎に計算され、MOT印紙税はRM28,000になります。外国人の住宅取得なら、同じ前提でRM110万の8%、すなわちRM8.8万が目安となるため、価格交渉で安く買えた場合でも印紙税が必ず減るとは限りません。
- SPAと予約書類
- タイトル情報またはマスタータイトル情報
- 物件の住所、面積、用途、過去の取引情報
- 銀行評価書や査定に関する資料
評価額の見込みを確認する際は、近隣の成約価格だけでなく、同じ開発内の階数、方角、内装、駐車場数、賃貸中か空室かといった条件も弁護士や評価士に共有します。売買価格と市場価値に差が出ると、印紙税だけでなく融資評価や必要自己資金にも影響します。
2026年時点のMOT印紙税率|居住者と外国人8%の早見表

マレーシア国民・永住者に適用される累進税率
マレーシア国民および永住者には、通常、住宅を含む不動産移転について累進税率が適用されます。2026年時点の税率は、最初のRM10万が1%、次のRM40万が2%、RM50万超からRM100万までが3%、RM100万超が4%です。
この税率は物件全額に一律でかかるのではなく、価格帯ごとに分けて計算します。RM100万の物件であれば、RM10万部分に1%、RM40万部分に2%、残るRM50万部分に3%を乗じ、MOT印紙税は合計RM2.4万が目安です。
- 最初のRM100,000:1%
- RM100,001からRM500,000:2%
- RM500,001からRM1,000,000:3%
- RM1,000,000超:4%
永住者は印紙税法上、外国人一律8%の対象から除かれており、国民と同じ累進税率が適用されます。一方、外国法人の名義で住宅を取得する場合は一律8%の対象となるため、マレーシア国民の配偶者との共同名義など名義構成を決める際は、署名前に税率の扱いを弁護士へ確認してください。
外国人・外国法人が購入する住宅の一律8%税率
外国人および外国法人が住宅用不動産を取得する場合、2026年1月1日以降、MOTなどの移転証書には、2025年財政法による印紙税法の改正で一律8%の印紙税が適用されます。対象はマレーシア国民でも永住者でもない個人、および外国法人による住宅用不動産の取得で、従来の4%から引き上げられた制度です。
一律8%は累進課税ではなく、課税標準となる売買価格または市場価値の全額にかかります。RM150万の住宅ならMOT印紙税はRM12万、RM200万ならRM16万が目安となり、物件価格の上昇に比例して初期費用が増えます。
- RM500,000の住宅:RM40,000
- RM1,000,000の住宅:RM80,000
- RM1,500,000の住宅:RM120,000
- RM2,000,000の住宅:RM160,000
この8%は住宅用不動産に関する税率です。改正後の印紙税法では、住居としてのみ使うサービスアパートメントやSOHOも住宅用不動産に含まれ、住宅以外の不動産を外国人・外国法人が取得する場合は一律4%です。外国人による購入には印紙税とは別に州政府の同意、外国人向け最低購入価格、ブミプトラ割当物件の購入制限が関わるため、広告上の販売価格だけで購入可否を判断できません。
購入価格別に試算するMOT印紙税|RM50万・RM100万・RM200万

RM50万の物件を購入する場合の累進課税計算
RM50万を通常税率で取得する場合、MOT印紙税はRM9,000が目安です。内訳は最初のRM10万に1%でRM1,000、残るRM40万に2%でRM8,000となり、合計RM9,000です。
外国人が住宅として同額のRM50万物件を取得できる場合は、8%の一律税率によりRM40,000が目安です。ただし、外国人は州ごとの最低購入価格を満たさなければならず、RM50万の物件は多くの地域で購入対象外となる可能性があるため、印紙税計算の前に州政府の許可基準を確認します。
- 国民・永住者の通常MOT印紙税:RM9,000
- 外国人の住宅用MOT印紙税:RM40,000
- 90%融資で借入RM450,000の場合のローン印紙税:RM2,250
- SPA印紙税:通常は1通につきRM10
初回購入者向け免除に該当するマレーシア国民であれば、RM50万以下の住宅についてMOTとローン契約の印紙税が全額免除される可能性があります。一方、この免除はマレーシア国民に限られるため、日本国籍の買主(マレーシア永住者を含む)や外国法人は対象外です。
RM100万・RM200万の物件にかかる国民・永住者と外国人の税額差
RM100万の住宅では、国民・永住者の通常MOT印紙税はRM24,000、外国人はRM80,000が目安です。RM200万では通常税率がRM64,000であるのに対し、外国人はRM160,000となり、差額はRM96,000まで拡大します。
RM100万超の国民・永住者向け税額は、RM100万までの累計RM24,000に、超過額の4%を加えて算出できます。外国人は価格に8%を掛ける計算ですが、実際には市場価値が売買価格を上回る場合、想定より税額が増える余地があります。
- RM1,000,000:国民・永住者RM24,000、外国人RM80,000
- RM2,000,000:国民・永住者RM64,000、外国人RM160,000
- RM2,000,000で90%融資なら借入RM1,800,000、ローン印紙税はRM9,000が目安
- 外国人の融資比率は物件、所得、居住資格、金融機関により50~70%程度となることがあります
投資目的では、8%の取得税を回収するには、売却益または賃料収入だけでなく、保有期間、管理費、修繕、空室、為替変動、売却時の税負担を含めた収支を確認する必要があります。日本円で資金を用意する場合は、リンギット高・円安の局面では頭金と税金の円換算額が増えるため、送金時期と為替予約の可否も金融機関に確認してください。
MOT以外に必要な費用|SPA・ローン契約・弁護士費用を含む総額

SPAの印紙税RM10と契約書類にかかる費用
SPAの印紙税は通常RM10の定額であり、価額連動のMOT印紙税とは別に支払います。SPAを署名しただけでMOTの税負担がなくなるわけではないため、見積書ではSPA stamp duty、MOT stamp duty、legal fee、disbursementを別項目で確認します。印紙税の納付期限は、マレーシア国内で署名した書類は署名日から、日本など海外で署名した書類はマレーシアに届いた日から30日以内です。遅れると、3か月以内ならRM50または不足税額の10%の高い方、3か月超ならRM100または20%の高い方の罰金が科されます。また2027年1月1日からは、評価・不動産サービス局(JPPH)の評価を伴わない不動産移転書類も、MyTaxのe-Duti Setemによる自己申告制に移行します。
弁護士費用は、通常、SPA・譲渡手続の業務とローン契約の業務でそれぞれ発生します。弁護士報酬規則(Solicitors’ Remuneration Order 2023)のTable Aでは、売買・譲渡の報酬は最初のRM50万が1.25%、次のRM700万が1%で、物件価格RM100万ならSPA側の基本弁護士費用はRM11,250です。デベロッパーから購入する新築(住宅開発法の対象取引)にはTable Bが適用され、SPA・ローン契約とも、金額がRM50万超RM100万以下ならこの報酬の65%、RM100万超なら50%になります。
- SPA・譲渡の弁護士費用
- ローン契約の弁護士費用
- 弁護士費用に対するSST
- 土地登記、会社・破産検索、郵送、認証、登録などの実費
法定報酬とは別に、実費は物件の権利状態、州政府同意、既存ローンの抹消、タイトルの有無、海外署名の有無で変動します。中古物件では売主側のローン抹消や権利移転の段取りに時間がかかる場合があるため、総額見積もりには「disbursementsを含むか」「同意申請費用を含むか」を明記してもらうことが判断基準になります。州政府同意の申請費用や鑑定費用を含めた購入時の諸費用の総額は、マレーシア不動産の諸費用(2026年版)で試算しています。
住宅ローン契約にかかる印紙税0.5%と融資関連費用
住宅ローンまたはイスラム金融を含む融資契約には、原則として借入額の0.5%の印紙税がかかります。物件価格ではなく融資額を基準にするため、RM100万の物件を90%融資で購入し、借入額がRM90万なら、ローン印紙税はRM4,500が目安です。
ローン契約の弁護士費用も融資額を基準に別途算定されます。RM90万の融資なら、最初のRM50万の1.25%と次のRM40万の1%を合算し、基本報酬はRM10,250が目安で、これにSSTと実費が加わります。
- 物件価格RM1,000,000、融資90%:借入RM900,000
- ローン印紙税:RM900,000×0.5%=RM4,500
- ローン契約の基本弁護士費用目安:RM10,250
- 銀行評価料、融資事務手数料、火災保険・ローン保険も別途確認
外国人はマレーシア国内での所得、資産状況、ビザ、購入物件、取引銀行によって融資の可否と融資比率が変わります。融資が否決された場合に予約金を失う条件もあり得るため、予約書への署名前に、ローン特約、返金条件、評価額が売買価格を下回った場合の追加自己資金を弁護士と確認してください。
初回購入者免除と外国人購入規制|適用条件・期限・対象外

初回購入者向けMOT印紙税免除・軽減措置の対象条件
2026年時点では、マレーシア国民が初めて住宅を取得する場合、市場価値RM50万以下の住宅について、MOTとローン契約の印紙税を全額免除する制度が設けられています。対象は、単独・共同を問わず住宅を所有したことがない国民で、相続や贈与で取得した住宅も所有歴に含まれ、免除は1戸に限られます。
この免除は永住者、外国人、外国法人には適用されません。日本在住の日本人がMM2Hなどの滞在資格を持っていても、滞在資格とマレーシア国民資格は別であり、外国人向け8%のMOT印紙税および州政府の購入規制が原則として適用されます。
- 買主がマレーシア国民であること
- 初めての住宅取得であること
- 市場価値がRM500,000以下であること
- 住宅用不動産であること
- SPAが制度上の対象期間内に締結されること
共同購入では、共同買主全員が条件を満たす必要があるとされるため、夫婦や親子で名義を分ける前に保有歴を確認します。また、LHDNの法定宣誓書の様式はSOHO、SOFO、SOVO、サービスアパートメントを対象外としており、改正後の印紙税法の住宅の定義と食い違うとマレーシア弁護士会が指摘しているため、これらの物件は広告の「residential use」だけで免除対象と判断しないことが必要です。
免除制度の期限・物件価格上限・申請時に確認する書類
初回購入者の全額免除は、現行制度ではSPAを2027年12月31日までに締結することが要件です。2026年10月9日に発表された2027年度予算案では、2027年1月1日から2030年12月31日までに締結するSPAを対象に、RM50万以下の住宅は全額免除を続け、RM75万以下の住宅は最初のRM50万を全額、RM50万を超える部分を50%免除する案が示されていますが、法令で定められるまでは確定ではありません。価格判定はSPAの表示価格ではなく市場価値RM50万以下が基準となるため、値引き後の契約価格がRM50万以下でも、市場価値が上回れば免除を受けられない可能性があります。
手続きは通常、買主が直接行うのではなく、コンベヤンシングを担当する弁護士がLHDNの印紙税手続で申告・提出します。必要書類に不足があると、免除の承認遅延や通常税率での支払いが起こり得るため、SPA署名前に提出書類と期限を一覧で確認します。
- 買主全員のMyKadなど国籍を証明する書類
- SPA、MOTまたは権利譲渡書類
- 住宅ローン契約書
- 初回住宅所有者であることの法定宣誓書
- タイトル、物件用途、評価額に関する資料
外国人が購入する場合は、上記の初回購入者免除ではなく、州政府同意の申請書、旅券、資金証明、SPA、物件資料、場合によってはビザ・滞在資格資料などを求められることがあります。州ごとに最低購入価格や同意料が異なり、例えばセランゴール州ではゾーン1・2がRM200万、ゾーン3がRM100万で、外国人が買えるのはストラタタイトルの物件に限られるため、物件を予約する前に購入可能な物件かを弁護士経由で書面確認する方法が実務的です。
まとめ
マレーシア不動産のMOT印紙税は、国民・永住者には1%から4%の累進税率、外国人・外国法人の住宅取得には2026年1月1日以降、原則一律8%が適用されます。売買価格より市場価値が高く評価されれば、その評価額が課税標準になり得るため、広告価格だけで税額を決めないことが資金計画の前提です。
RM100万の住宅では、通常税率のMOT印紙税がRM24,000の目安である一方、外国人はRM80,000が目安です。これにSPAのRM10、ローン額の0.5%の印紙税、SPA・ローン双方の弁護士費用、SST、実費、外国人なら州政府同意費用などを加えて、購入総額を見積もります。
日本から購入・移住を検討する場合は、物件選定の前に、外国人購入の可否、州の最低購入価格、8%印紙税、融資比率、賃貸需要、空室率、管理費、為替変動を一つの資金計画にまとめることが必要です。税務・法務・ビザの結論は個別事情で変わるため、LHDN、州政府、金融機関、有資格の不動産弁護士に最新の制度と書類要件を確認してからSPAへ署名してください。
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